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水戸地方裁判所 昭和48年(わ)340号 判決

本籍

東京都港区南青山四丁目九一番地

住居

茨城県日立市久慈町二丁目六番一二号

事務員

伏屋淑子

昭和一一年一月一四日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官矢野光邦関与のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月、罰金八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

ただしこの裁判が確定した日から一年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は茨城県日立市久慈町三丁目六番一二号において日立港病院を経営し医業を行なう同病院長医師伏屋惇の妻で同病院の金銭出納税務を担当するほか同病院の経営全般を掌握処理しているものであるが、右伏屋惇の業務に関し所得税を免れようと企て、

第一、昭和四五年中における総所得金額は四四、六四一、五八二円でこれに対する所得税額は二〇、三〇六、〇〇〇円であるのにかかわらず、自由診療による診療報酬、健康診断料、電話使用料等の売上を一部除外し、また公表帳簿上消耗品費、福利厚生費、雑費等の経費を水増し計上して所得を秘匿したうえ、同四六年二月一三日所轄の同市若葉町二丁目一番八号所在の日立税務署において情を知らない税務代理人税理士結引勝彦を介して右税務署長に対し総所得金額は二〇、三七二、二五〇円でこれに対する所得税額は五、四二四、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により正規の所得税額二〇、三〇六、〇〇〇円と右申告による所得税額五、四二四、一〇〇円との差額一四、六八一、九〇〇円をほ脱し、

第二、同四六年中における総所得金額は四八、九七九、一三〇円でこれに対する所得税額は二一、五三〇、五〇〇であるのにかかわらず、前同様に売上を一部除外して所得を秘匿したうえ、同四七年三月一五日前記日立税務署において情を知らない税務代理人税理士結引勝彦を介して右税務署長に対し総所得金額は二六、五三四、九〇九円でこれに対する所得税額は七、六四四、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により正規の所得税額二一、五三〇、五〇〇円と右申告による所得税額七、六四四、二〇〇円との差額一三、八八六、三〇〇円をほ脱したものである。

(証拠の標目)

一、被告人の当公判における供述(全事実)

一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四七年六月一四日付、同月一五日付、同月一七日付、同月二七日付、同月二八日付、同年七月二日付、同年一二月一日付、同月八日付、同四八年一月二六日付の供述調書(全事実)

一、被告人の検察官に対する供述調書(全事実)

一、大蔵事務官作成の調査書(全事実)

一、大蔵事務官作成の調査書(全事実)

一、国税査察官作成の伏屋惇の昭和四五年度分の修正損益計算書(第一の事実)

一、大蔵事務官作成の伏屋惇の昭和四五年度分の脱税額計算書(第一の事実)

一、国税査察官作成の伏屋惇の昭和四六年度分の修正損益計算書(第二の事実)

一、大蔵事務官作成の伏屋惇の昭和四六年度分の脱税額計算書(第二の事実)

一、伏屋惇の大蔵事務官に対する昭和四七年六月一四日付、同年一一月二一日付質問てん末書(全事実)

一、伏屋惇の検察官に対する供述調書(全事実)

一、目黒富夫の大蔵事務官に対する昭和四六年六月一四日付、同年一二月七日付質問てん末書(全事実)

一、結引勝彦の大蔵事務官に対する質問てん末書(全事実)

一、結引勝彦の検察官に対する供述調書(全事実)

一、小野瀬栄一の大蔵事務官に対する質問てん末書(第一の事実)

一、小野瀬栄一の検察官に対する供述調書(第一の事実)

一、小野瀬静代の大蔵事務官に対する昭和四七年六月一五日付、同年七月一八日付各質問てん末書(第二の事実)

一、国税査察官作成の別表(簿外預金一覧表(全事実))

一、国税査察官作成の別表(有価証券一覧表(全事実))

一、大蔵事務官作成の現金預金有価証券調査書(全事実)

一、大蔵事務官作成の預金額調書(全事実)

一、大蔵事務官作成の預金有価証券印章確認書(全事実)

一、大庭亀雄の大蔵事務官に対する昭和四七年六月一六日付、同年七月一一日付各質問てん末書(全事実)

一、大蔵事務官作成の自由診療収入調査書(全事実)

一、目黒富夫作成の昭和四八年六月六日付答申書(全事実)

一、山城隆作成の答申書(全事実)

一、結引勝彦作成の昭和四七年一一月六日付答申書(全事実)

一、国税査察官作成の電話料金収入調査書(第二の事実)

一、国税査察官作成の薄外売上調査書(第二の事実)

一、国税査察官作成の四五・四六年分消耗品費調査書(全事実)

一、押収中の総勘定元帳一冊(昭和四五年度-昭和四八年押第六一号の一)、同総勘定元帳一冊(昭和四六年度-同押号の二)、同金銭出納帳簿一冊(昭和四五年度-同押号の三)、同金銭出納帳一冊(昭和四五年度-同押号の四)、同会計帳一綴(昭和四六・一〇-四七・五-同押号の六)、同会計帳一冊(同押号の七)

(右全事実)

(法令の適用)

被告人の判示行為は各所得税法第二三八条第二四四条第一項に該当するので、懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条第一〇項により重い第一の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で罰金刑については同法第四八条第二項により合算額の範囲内で被告人を懲役六月、罰金八〇〇万円に処し、同法第一八条により右罰金を完納することができないときは金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法第二五条第一項に則りこの裁判が確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 林正行)

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